ニューロダイバーシティ(neuro-diversity)とは、「脳多様性」や「神経多様性」などと訳される言葉で、具体的には「脳や神経の在り方には、人それぞれに違いがあり、それらは人間の多様性の一つとして尊重されるべきである。」とする考え方を指す。脳や神経の在り方に由来する人の様々な特性や個性を積極的に活用し、多様性を活かした社会を実現しようとすることは、人口減少局面にある我が国において非常に重要なテーマであると考えられる。
この言葉は1990年代後半に生み出され、主にASD(自閉症スペクトラム障害)者の権利擁護の文脈で広がった。ニューロマイノリティ(neuro-minority)とも呼ばれる、神経学的少数者の社会運動の文脈でニューロダイバーシティという考え方が生み出され、広がっていったことは非常に重要な意味があり、今後も受け継がれなくてはならない視点である。
しかしながら、ニューロティピカル(neuro-typical)とも呼ばれる神経学的多数派と考えられている人たちの間にも、脳・神経やそれらに由来する人の認知・情報処理の在り方等に個別的な違いが存在し、こういった違いもまた尊重すべきであると考えられる。そう考えれば、多数派、少数派を問わずすべての人の脳や神経由来の特性や個性を、正しく理解し相互に尊重する姿勢や方法論が重要であるということが出来よう。
このニューロダイバーシティという言葉の本質的な意味に立ち返れば、本来対象となるのは「すべての人の脳や神経の在り方」であり、その違いをより相互に尊重しあえる社会の模索である。
本研究会は、ニューロダイバーシティをテーマとした学際的な研究会として、我が国における我が国に合ったニューロダイバーシティの普及と発展について様々な立場、視点、専門性から議論・検討すること、またその成果を広く社会に発信しニューロダイバーシティ社会の実現への一助となることをその設立趣旨とするものである。